「根釧パイロットファームの光と影」を読んでみた

たまには読書でも。

根釧パイロットファームの光と影

根釧パイロットファームの光と影

根釧パイロットファームとは、現在の別海と中標津を結ぶ道道8号線の両側に広がる、別海町美原と豊原の両地区で行われた開拓事業でした。
パイロットファームの名前は聞いたことがありましたが、一般書店で資料を目にすることはあまりなく、鎌田慧著「日本列島を往く(5)夢のゆくえ」

日本列島を往く(5)

日本列島を往く(5)

にて1章が割かれているくらいしか見たことがありませんでした。
少し前の道新にこの本が紹介されているのを見て、購入し読んでみました。
昭和30年代、世界銀行の融資を受け国策として進められた根釧パイロットファーム事業。
しかしその中身はと言うと、酪農するには狭い土地、泥炭湿地帯も多く思うように作物が育たない。
日本の風土になじんだホルスタイン種ではなく外国より輸入した日本で実績のなかったジャージー種を導入するも、乳量が少なかったり、病気でほぼ全滅の被害を受ける。等々、入植時からさまざまな問題をかかえていました。
しかも、そのような失敗に対して対応が何も考えられていない、失敗しても保証のない実験場に放り込まれた開拓農家の苦労を実体験した著者による、貴重なドキュメントになっています。
実質的に手狭なパイロットファームの受け皿的存在になった、新酪農村の展望台に行ったときは、ただ日本離れした風景という感想しか出てきませんでしたが、
この風景も開拓農家さんの苦労の上に成り立っているのかと思うと、今までとは少し違って見えるような気がします。